脊椎関節炎について~腰や背中が痛くなる、関節リウマチとは異なる病気
脊椎関節炎とは?
・脊椎(頚椎〜胸椎〜腰椎)に痛みと炎症が起こり、さらに四肢の関節炎、アキレス腱などの腱が骨に付く箇所(腱付着部)の痛み、手や足の指のむくみ、などが見られる病気です。実は「脊椎関節炎」は幾つかの疾患をまとめたグループ名であり、具体的には
(1)強直性脊椎炎、
(2)乾癬性関節炎、
(3)反応性関節炎、
(4)炎症性腸疾患※1関連関節炎、の4つが含まれます。
(1)~(4)いずれも、関節リウマチと一番大きく異なる点は、腰や背中の痛みがある点です。特に腰より少し下の仙腸関節(左右臀部と腰の間)という箇所に痛みが来ることが診断のポイントとなります。また手足の腫れも関節リウマチと少し違い、手・足全体がむくんだ様になりますが、はっきりと区別が難しい場合も多くあります。さらに脊椎関節炎は“自然免疫”という免疫のシステムが自分自身を攻撃することが原因とされており、関節リウマチなどで診断に役に立つ「自己抗体」は陽性になりません。
脊椎関節炎の病気は症状の出方に個人差が大きいため、軽いと「単なる腰痛」などと思って受診するまで時間がかかってしまい、進行すると脊椎や四肢の関節が変形して固くなってしまうことがあるため、少しでも当てはまれば早めの受診をお勧めします。また腰痛や腱付着部の痛みを生じる病気はたくさん存在するため、鑑別診断もしっかりと行うことが重要です。
(※1:潰瘍性大腸炎やクローン病などが知られています)
【 脊椎関節炎:このような方はご相談ください 】
・特にきっかけがないのに続く腰や背中、首の痛み(良いときと辛い時を繰り返します)
・手指、足趾の腫れ、またはむくんだ様な腫れ方
・踵や肘などの痛み
・皮膚の発赤・かゆみ:特に『乾癬性関節炎』では皮膚の病気である乾癬がみられます。
→自分ではわかりにくい箇所にあることも多いです。
・発熱:脊椎関節炎でも発熱を認める方がいらっしゃいます。
【 脊椎関節炎の検査 】
- 血液検査:関節リウマチや他の膠原病を鑑別します。また痛みが強い場合は炎症反応が上昇する場合もあります。
- レントゲン・関節エコー・MRIなどの画像検査:骨に起こる炎症や変形、腱の炎症などを調べます。
- 皮膚生検:乾癬の皮疹を正しく行うため、疑われる場合は皮膚科の先生と連携して皮膚生検を行うことがあります。
(※なお、このように皮膚疾患に関連する関節炎として、脊椎関節炎のグループではないのですが、
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)に合併する骨関節炎も知られています。)
【 脊椎関節炎の治療 】
・消炎鎮痛剤をまず用い、効果が不十分であれば疾患に応じて抗リウマチ薬の内服を行います(ただし、抗リウマチ薬は関節リウマチに適用がある全てのものがそのまま使えるわけではありません)。
近年、注射剤である生物学的製剤が数種類(TNFα阻害剤、IL-17阻害剤、IL-23阻害剤)使用できるように
なり、格段に治療効果が良くなりました。さらに内服のJAK阻害剤も保険適応となり,少しずつ使われ始めています。
乾癬に合併して起こる乾癬性関節炎の場合は、皮膚の治療は皮膚科の先生と協力して行わせて頂きます。
・治療薬の進歩に伴い、症状がとても良くなる方がたくさんいらっしゃいます。